エンジニアはどこへゆくのか 〜電機メーカ開発者の悩める日々~

組み込み系エンジニア。新卒でメーカに入社してからの日々。思ったこと、考えたことを書いていく。1回転職した。

特攻あるのみ!組み込みの開発現場とはこんなところだ!~電気機器・電化製品の開発事情を赤裸々に綴る~

組み込み機器業界で働く開発者です。

タイトルの話をする前に「組み込み」について説明します。組み込みとは、CPUを組み込んだ製品のことです。炊飯器やTVなどの家電、プリンタ、カメラ、工作機械などです。パソコンとは違い、その製品専用にCPUを選び、その製品専用のソフトウエアを用意します。詳しくは「組み込み」、「組み込み機器」とかでググってください。

 

なお、当たり前ですが、限られたリソース(金、人、開発環境)で限られた期間で市場投入できるところまで完成度を高める、ということを各製品チームが行います。

 

では本題です。組み込みの現場とはこんなところだ。

1.コスト至上主義

2.メカ>電気>FW(ソフト開発者)の順にえらい

3.現状維持バイアス強い=新しいことしない

4.ノリが昭和

 

では、順に説明します。

1.コスト至上主義

1円でも1銭でも安く。特にコモディティ化している家電などは顕著だと思います。競争力=コスト(安いこと)という考え方が強い。製品単価を少しでも抑えねば。そのため、部品はより安価なものを選定します。例えばCPUなんてこの時代にこんなマイコン使いますかレベルの低スペック品です。また、開発費も製品コストに乗ってくるため、抑制対象です。試作回数を減らす。余剰部品を作らない。コスト至上主義は根強く、目に見えないものは思考の対象外です。例えば、開発環境が古いから効率が悪いと思っても、新規の開発環境を導入するコストばかり気になってなかなか導入できません。10年前、20年前の環境で開発しているなんてよくある話です。

 

2.メカ>電気>FW(ソフト開発者)の順にえらい

 製品チームは、おおざっぱにくくると、メカ設計+電気設計+FW設計で構成されます。(なんでFW(ファームウェア)と呼ぶか興味ある人はググってください。)

人数は、メカ:電気:FW=3:2:1です。そして、最も変更に時間とお金がかかるのがメカ。型が必要ですから。次が電気。基板が必要ですから。FWは何もいらない。ということで、メカ設計が「もううち無理!」って言い出すと、電気とFWがなんとかしようとします。でも、電気が「うちも無理!」って言い出したらFWでなんとかするしかないですね。製品開発の特に終盤は常にFWにしわ寄せがくる構造。メカや電気が出したきっつい仕様をFWが実装するような感じになっちゃって毎回大変っと。

 

3.現状維持バイアス強い=新しいことしない

 基本的にいつだって開発者は忙しい。開発中の製品は問題だらけだし、人は足りてないのに開発期間はどんどん短くなっていく。おまけに特許提案や工場との調整、すでに市場投入した製品のトラブルまで舞い込んできて日々目が回ります。目の前の問題を片づけなければレビューに間に合わないとか、役員に説明できないとか、いろんな事情があって日々切羽詰まっているわけです。そんな中で新しいことやる余力はないですね。新しいことはリスクがあります。新しい環境を導入すれば開発効率がよくなるのはわかる!やり方を変えなければいけないこともわかっている!こんな開発スタイルでは競合他社に負けてしまう!でも、どうしても今日は忙しい。そんなことやる人的余裕もない。だから、変化は明日にしよう。そう思って日々先送りされ、明日が来週になり、来週が来月になり…いつまでも変わらないのです。誰か他部門の人が予算調整や環境導入までやって教育コストもかからず、移行も一瞬です、というような変化があればきっと変わるでしょうね。ありえないけど。

 

4.ノリが昭和

全員 一致団結して総力戦で開発日程を死守せん!という文化です。旧日本軍ですね。そのためには残業も致し方ない。これはコストの話と矛盾するのだが文化が勝つ。リリース日程を遅延した場合の機会損失は大きいとか、いろいろ理由は付けるのだが、結局はいくら残業してもいいから何とかしろ!という風土。また、上の指示は強い。上司が、やれ!といえばやり方は間違っててもそのやり方でやりきる。もうそのやり方は間違っていると誰もが気づいていても倒れて死ぬまでは突き進む。特攻あるのみ!

 

以上、組み込みの現場を書きました。

当たり前ですが、組み込み業界は広いので、僕の知っている世界なんてホントに小さい部分だけのお話です。うちは違うとか、もっとひどいとかあればコメントください。